給与の取扱について

1.使用人に対する給与(法36)

使用人に対する給与は原則として損金の額に算入されますが、特殊関係使用人(役員の親族等)に対する給与のうち不相当に
高額な部分の金額は損金に算入されません。

(1)特殊関係使用人の範囲
  ①役員の親族
  ②役員と事実上婚姻関係と同様の関係にあるもの
  ③役員から生計の支援を受けているもの
  ④ ②、③のものと生計を一にする親族

(2)不相当に高額な部分の金額
  当該使用人の職務の内容、その会社の収益及び他の使用人に対する給与の支給の状況、同種同規模の会社の使用人に対する給与の支給の状況等に照らし、当該使用人の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額となります。
※退職給与については、当該使用人のその会社の業務に従事した期間、その退職の事情、同種同規模の会社の使用人に対する退職給与の支給の状況等に照らし、その退職した使用人に対する退職給与として相当であると認められる金額となります。

2.役員に対する給与

    役員の範囲については「役員の範囲」参照

①報酬(法34)

・一定の給与は損金に算入されますが、隠蔽又は仮装経理により支給した金額や、不相当に高額な部分は損金不算入となります。

・損金の対象となる給与
   下記Ⅰ~Ⅲのいずれにも該当しない給与(臨時の役員賞与、臨時の経済的利益等)は損金不算入となります。(法34①)
Ⅰ.定期同額給与(法34①一、令69①、基通9-2-11)
A.その支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである給与で、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの。
⇒ 一会計期間中毎月同じ額の報酬を払う場合はこれにあたります
B.定期給与の額につき、次に掲げる改定(以下「給与改定」といいます。)がされた場合におけるその事業年度開始の日又は給与改定前の最後の支給時期の翌日から給与改定後の最初の支給時期の前日又はその事業年度終了の日までの間の各支給時期における支給額が同額であるもの
 ⇒ Aに順ずるものとして下記のものが認められています
イ その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までにされた定期給与の額の改定。ただし、継続して毎年所定の時期にされる定期給与の額の改定で、その3か月を経過する日後にされることについて特別の事情があると認められる場合にはその改定の時期にされたもの
⇒ 定時株主総会による通常の改定は認められることになります。
ロ その事業年度においてその法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情(以下「臨時改定事由」といいます。)によりされたその役員に係る定期給与の額の改定(イに掲げる改定を除きます。)
⇒代表取締役から平取締役になったので減額した場合なども原則認められます。
ハ その事業年度においてその法人の経営状況が著しく悪化したことその他これに類する理由(以下「業績悪化改定事由」といいます。)によりされた定期給与の額の改定(その定期給与の額を減額した改定に限られ、イ及びロに掲げる改定を除きます。)
⇒経営状況が著しく悪化した場合の減額改定は許される(定期同額給与として認められる)という規程で、条件が曖昧なのですが、通達に以下の記述があります。

法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれないことに留意する。(基通9-2-13)

⇒さらに平成20年12月に国税庁が「役員給与に関するQ&A」を発表したので引用します。

例えば、次のような場合の減額改定は、通常、業績悪化改定事由による改定に該当することになると考えられます。
  1. 株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合
  2. 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合
  3. 業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合
上記①については、株主が不特定多数の者からなる法人であれば、業績等の悪化が直ちに役員の評価に影響を与えるのが一般的であると思われますので、通常はこのような法人が業績等の悪化に対応して行う減額改定がこれに該当するものと考えられます。

一方、同族会社のように株主が少数の者で占められ、かつ、役員の一部の者が株主である場合や株主と役員が親族関係にあるような会社についても、上記①に該当するケースがないわけではありませんが、そのような場合には、役員給与の額を減額せざるを得ない客観的かつ特別の事情を具体的に説明できるようにしておく必要があることに留意してください。

上記②については、取引銀行との協議状況等により、これに該当することが判断できるものと考えられます。

また、上記③に該当するかどうかについては、その策定された経営状況の改善を図るための計画によって判断できるものと考えられます。この場合、その計画は取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保することを目的として策定されるものであるので、利害関係者から開示等の求めがあればこれに応じられるものということになります。

上記に掲げた3事例以外の場合であっても、経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情があるときには、減額改定をしたことにより支給する役員給与は定期同額給与に該当すると考えられます。この場合にも、役員給与の額を減額せざるを得ない客観的な事情を具体的に説明できるようにしておく必要があります。

なお、業績や財務状況、資金繰りの悪化といった事実が生じていたとしても、利益調整のみを目的として減額改定を行う場合には、やむを得ず役員給与の額を減額したとはいえないことから、業績悪化改定事由に該当しないことは言うまでもありません。

 ⇒このQ&Aにより条件が柔軟化されたと見られますが、依然、同族会社の場合や利益調整目的と思われる場合には厳しく判断されることがうかがえます。通常の融資継続に際して利益を出さなければならない場合などでは状況によると考えられますが、いずれにしろ客観的な事情を具体的に説明できる準備が必要となります。
また、同Q&Aで、病気で職務が履行できない時期に一時減額して、その後戻した場合も定期同額給与に当たるとされています。
C.継続的に供与される経済的利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの
⇒会社が毎月負担する、社宅の水道光熱費などはこれにあたります

     Ⅱ.事前確定届出給与(法34①二、令69②)
所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与(定期同額給与及び利益連動給与を除く)で、期限までに所轄税務署長にその定めの内容に関する届出をしているもの。ただし、同族会社以外で定期給与を支給 しない役員に対して支給する給与は届出不要です。
⇒事前に時期、金額等所定の事項を届出すれば、賞与月に多く支給することもできます。

ただし、期中に役員の地位の変更や著しい業績の悪化があった場合には変更届出の提出により変更することも可能です。

     【「事前確定届出給与に関する届出」の提出時期】
  1. 下記2.又は3.に該当する場合を除き、株主総会等の決議によりその役員の職務につき事前確定給与の定めをした場合における当該決議をした日(同日がその職務の執行を開始する日後である場合にあっては、当該開始する日)から1月を経過する日までです。ただし、その日が当該事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から4月を経過する日後である場合には当該会計期間4月経過日までです。(保険会社では当該会計期間開始の日から5月を経過する日となります)
     
  2. 新たに設立した法人がその役員のその設立の時に開始する職務につき事前確定給与の定めをした場合には、その設立の日以後2月を経過する日までです。
     
  3. 臨時改定事由(役員の職制上の地位の変更、職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情をいいます。)により事前確定給与の定めをした場合(臨時改定事由が生ずる直前の職務につき事前確定給与の定めがあった場合を除きます。)については、次に掲げる日のうちいずれか遅い日までです。
         イ 上記1.に掲げる日(上記2.に該当する場合には、2.に掲げる日)
         ロ 当該臨時改定事由が生じた日から1月を経過する日
    ただし、役員の当該臨時改定事由が生ずる直前の職務につき事前確定給与の定めがあった場合には、変更届出となります。
       【「事前確定届出給与に関する変更届出」の提出期限】
  1. 臨時改定事由にあたる場合は当該臨時改定事由が生じた日から1月を経過する日までです。
  2. 業績悪化改定事由(経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由をいいます)にあたる場合は当該業績悪化改定事由により直前届出に係る事前確定給与の定めの内容の変更に関する株主総会等の決議をした日から1月を経過する日。ただし、当該変更前の当該直前届出に係る事前確定給与の定めに基づく給与の支給の日(当該決議をした日後最初に到来するものに限ります)が当該1月を経過する日前にある場合には、その支給の日の前日までです。
Ⅲ.利益連動給与
同族会社に該当しない内国法人が、業務執行役員に対して支給する利益連動給与で一定の要件を満たすものは、損金算入が認められます。(法34①三、令69⑥~⑩、規22の3③)
⇒有価証券報告書に記載された内容を指標として使わなければならないため、利用はほぼ株式公開会社に限られ、事実上中小企業には無縁の制度となっています。

・不相当に高額な部分の金額は実質基準と形式基準のうち多い方により計算します。(法34②、令70三)

(1)実質基準
 その役員の職務の内容,その法人の収益や他の使用人への給与の支給状況,同業社で類似規模の会社の役員報酬の支給状況等を判断して過大報酬を算定します。

(2)形式基準
 定款や株主総会等の決議により、役員報酬として支給できる金額の限度額を定めている法人が、その役員に支給した報酬の合計額が、定められている限度額を超える場合の、その超える部分の金額が過大報酬となります。

②退職給与(法34②、令70二)

 退職給与は損金に算入されますが、不相当に高額な部分は損金不算入となります。原則として、株主総会の決議等によって退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度の損金となります。

③賞与(法34②、令70一)

 基本的には全額損金不算入となります。ただし、使用人兼務役員の使用人分賞与で、他の使用人に対する賞与の支給時期と同じ時期に支給したものの額は損金に算入されます。
 ⇒役員分だけ未払い処理し、後日支給した場合などは認められないので注意が必要です。また通常の使用人給与と同じく、
  不相当に高額な部分の金額は損金に算入されません。

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