決算書の見方と経営分析について

 決算書のうち、会社の財政状態がわかる貸借対照表と、会社の収益力がわかる損益計算書は、経営判断や行動の指針のための重要な情報源となります。  

(1)損益計算書の分析

① 売上総利益率  

売上総利益率は売上高に占める売上総利益(粗利)の割合です。

売上総利益は、企業のもっとも基本的な利益です。

「売上総利益=売上高-売上原価」となる訳ですから、物品販売業の場合には、売上原価は、仕入単価によって大きく左右されます。

仕入単価は通常仕入数量によって価格が違ってきますので、多くの数量を売る力があれば、安い単価で仕入れることができ、あまり売る力がない場合には、仕入単価も高くなるということにもなります。

従って、売上総利益率は会社の構造的な要因が関係していることが多いので、常に注意が必要です。

売上総利益率=売上総利益÷売上高×100

② (売上高)経常利益率

 経常利益率は、売上高に占める経常利益の割合です。

 経常利益は、会社が通常の営業活動を行った結果に算出された会社の総合的な業績をあらわす利益ですので、経常利益率は、最も重要視される比率です。

 売上総利益率は良くても、広告宣伝費や営業マンの人件費等の販売費が直接売上増加に結びついていない場合や、無駄な経費が多いと営業利益が少なくなり、営業利益率や経常利益率も下がってしまいます。

 また、営業利益は多くても、営業外費用である、借入金等の支払利息が多いと経常利益率が下がりますので、会社の財務体質にも注意する必要があります。
 
経常利益率=経常利益÷売上高×100

(2)貸借対照表の分析

① 流動比率

 流動比率は流動資産と流動負債の割合をみて、会社の短期の支払能力を見る比率です。

 1年以内に返済することになる買掛金や支払手形等の流動負債に対して、1年以内に現金化される預金や売掛金、棚卸資産等の流動資産が多ければ、とりあえず短期間の支払能力があるという訳です。

 ただし、売掛金に不良債権があったり、棚卸資産に売れない不良在庫が多数含まれている場合には、流動比率だけで支払能力の判断をすることはできません。

  流動比率=流動資産÷流動負債×100

② 自己資本比率

 自己資本比率は、総資本に占める自己資本の割合をみて、会社の財務体質の健全性を見る比率です。

 総資本は他人資本(負債合計)と自己資本(資本金、法定準備金、剰余金の合計)に分類することができますが、返済期限がない自己資本の比率が高いほど、財務体質が健全ということになります。

 ただし、高ければ高いほど良いというものでもありません。すべて自己資本で賄えれば安全ですが、元々自己資本の少ない企業は、他人資本を上手に使って、より多くの利益を獲得する積極的な経営も必要です。
 
自己資本比率=自己資本÷総資本×100

③ 固定比率

 この比率は固定資産と自己資本との割合をみて、長期にわたる安定性を見る比率です。

 会社は営業活動をするに当たって機械装置や土地建物などの固定資産を購入する必要が生じますが、この固定資産は棚卸資産等と違い、「売却してすぐに資金を回収する」という性質のものではないため、長期間にわたって資金が固定化してしまいます。

 従って、すぐに「お金」にならない資産は、なるべく自己資本で賄った方が将来にわたって安全であるという見方です。過剰な設備投資を行っていないかを見る尺度と言えます。
 
固定比率=固定資産÷自己資本×100

(3)決算書全体の分析

① 総資本回転率

  収益力の判断では、総資本の回転率についても着目する必要があります。

 少ない元手で売上を伸ばした場合には、効率的な経営を行っていることになります。つまり、投下した資本の効率を見るのが、総資本回転率ということになります。
 なお、薄利多売の業種ほど、総資本回転率は高くなります。
 
総資本回転率=売上高÷(前期末と当期末の総資本平均)×100

② 総資本経常利益率

  総資本経常利益率は、総資本に対する経常利益率の占める割合です。

 この比率は、どれくらいの元手で、いかに効率よく利益を稼ぐことができたのかといった、投資効率を判断する基準ですから、場合によっては、定期預金に資本を預けていた方が良かったなどという事のないようにしたいものです。
 
総資本経常利益率=経常利益÷(前期末と当期末の総資本平均)×100
 
*この算式は経常利益率と総資本回転率を組み合わせたものです。

算式の分母と分子にそれぞれ売上高を乗じると下記の算式となります。

 従って、この比率を増加させるためには、経常利益を上げるか総資本を圧縮させる必要があります。

{経常利益÷売上高=経常利益率}×{売上高÷(前期末と当期末の総資本平均)=総資本経常利益率}×100


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