1人当たり5,000円以下の飲食費

 平成18年の交際費に関する税制改正について、「昔は3,000円程度までの飲食費は(交際費ではなく)会議費で認められていたが、5,000円まで認められるようになった。」というように、理解されている方もいらっしゃるのではないでしょうか?。ですが、この理解はあまり正確ではありません。

 では、どういうことなのか、という部分を中心に解説していきます。

 この平成18年度の税制改正により、法人の支出する交際費等の損金不算入制度が改められ、交際費等の範囲から「1人当たり5,000円以下の飲食費」が一定の要件の下で除外されています。

 これについて誤解されやすい部分も多いので、注意事項をまとめます。

交際費と損金

 まずは大原則の確認になりますが、(詳しくはこちら。)交際費は税務上、全額損金となるわけではありません。

 交際費は基本的には税務上損金になりませんが、中小企業者(資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人)は、年間600万円までの交際費に対してその90%を損金にできます。

 逆に言えば交際費の10%は損金にならず、また、年間600万円を超える部分は全く損金にすることができません。

 ここで交際費と書いたものは、正確には税法上の「交際費等」で、一般的な交際費の概念より広い概念です。

 以下この税法上の交際費等を「交際費等」と書くようにします。


 今回の話はこの「交際費等」についての話です。1人当たり5,000円以下の飲食費のうち一定のものは100%損金にすることができる(「交際費等」から除かれる)ようになり、税務上の扱いが有利になりました。

1人あたり5,000円以下の交際費の勘定科目

 損金になるかならないかは税務上の話なので、会計上の勘定科目はは5,000円以上であろうがなかろうが本来「交際費」勘定が自然でしょう。

 ただし、集計の手間もあるので、あえて1人あたり5,000円以下の飲食費は「会議費」勘定などの科目を使っても大きな問題はありません。

交際費と会議費

 少々もったいぶった書き方をしましたが、冒頭の理解はやはりいくつか大きな間違いがあります。

 まず、5,000円以下の飲食費には「社内飲食費」は含まれません。少なくとも、接待する相手方である得意先等が1人でも参加していなければ適用されないものです。


 逆に改正前ままでは内容が会議の要素を含まない純粋な接待や慰安であれば5,000円以下でも3,000円以下でも原則的には「交際費等」となっていました(実際には費用対効果の関係で税務署はあまり細かい金額のもはスルーする場合が多く、結果的に3,000円程度までであれば比較的安全でしたが)。

その点今は条件を満たしていれば、お酒を飲んでも、会議ではない単なる接待でも「交際費等」から除かれるようになりました。


 それでは社内の会議での飲食費についてはどう扱うべきでしょうか。社内でも社外でもあてはまることですが、会議に関連して通常要する費用は会議費として交際費から除くことができます。その線引きについては「1人あたり3,000円程度まで、かつ、アルコールはビール1、2杯までであれば会議費としてよろしい」という、明文化はされていませんが、一般的に採用されていた税務署の判断がありました。ではこの線引きはそのままで良いのでしょうか?


 実はここも変わっています。通達の注記に、会議に関連して通常要する費用は5,000円を超える場合であっても交際費から除外されるという内容の文が加わりました。今後、会議費かどうかの線引きは実質により判断されると考えられています。

 既に文章が分かりにくくなってきましたので、交際費と会議費を中心に平成18年改正による飲食費の税務上の取り扱いの変化を下に整理します。会議に関するものなのかどうか、社外の同席者がいるかいないかで取り扱いが違ってきますということです。

・平成18年改正による飲食費の税務上の扱いの変化

 ①社外の相手がいる場合で会議ではない場合

 通常の接待ですが、一人当たりの金額が小さい場合は有利になりました。
 (一般的な勘定科目)交際費
 (改正前の税務上の扱い)すべて「交際費等」。
 (改正後の税務上の扱い)原則「交際費等」。1人あたり5,000円までは「交際費等」から除く。

 ②社外の相手がいる会議

 取引先との業務上の打合せなどです。金額の定めがなくなった上、会議ではないと判断されても1人当たり5,000円までなら「交際費等」から除かれるようになりました。

 (一般的な勘定科目)会議費
 (改正前の税務上の扱い)1人当たり3,000円程度まで、かつアルコールはビール1、2杯まで会議費(「交際費等」にあたらない)。
                 それを超えるものは会議に不必要ということで全額が「交際費等」。
 (改正後の税務上の扱い)実質により会議費かどうか判断(注)。
                 会議費の場合は金額の定めはなく、いくらであろうと「交際費等」にあたらない。
                 会議費でない場合は原則「交際費等」。ただし、1人あたり5,000円までは「交際費等」から除く。

 ③社外の相手がいない場合で会議ではない場合

 社内の慰安などです。個々の事例については、細かい線引きがあり確認が必要ですが、社会通念上一般的に会社の経費で行われている慰安や行事で、金額が大きくないものはほぼ福利厚生費で処理できます。5,000円基準は原則関係ありません(外部の取引先も参加した場合は実態で判断します)。

 (一般的な勘定科目)さまざまなケースあり。

福利厚生費、交際費、給与など。

 (改正前の税務上の扱い)さまざまなケースあり。

主に福利厚生費にあたるケース(一般的な忘年会の一時会や残業食事代など)や給与にあたるケース(昼食代のうち一定のものなど)
「交際費等」にあたるケースがあります。
(福利厚生費にあたるケースが多いです)

 (改正後の税務上の扱い)変更なし。

 ④社外の相手がいない会議

 社内の会議です。3,000円基準はなくなり、金額にかかわらず実質で判断されます。5,000円基準は関係ありません。

 (一般的な勘定科目)会議費

 (改正前の税務上の扱い)1人当たり3,000円程度まで、かつアルコールはビール1、2杯まで会議費(「交際費等」にあたらない)。それを超えるものは全額が「交際費等」。

 (改正後の税務上の扱い)実質により会議費かどうか判断。

(注.下に細かく説明)

会議費の場合は金額の定めはなく、いくらであろうと「交際費等」にあたらない。
会議費でない場合は金額に関わらず「交際費等」。

(注)通達で「会議に際して社内又は通常会議を行う場所において通常供与される昼食の程度を超えない飲食物等の接待に要する費用」は会議費に該当するとされています。

 ここにかつて3,000円基準が通用していたのですが、5,000円を超える場合であっても交際費から除外されると通達の注記に明記されたのです。

 「通常会議を行う場所において通常供与される昼食の程度を超えない飲食物等の接待」ですから、大企業の重要案件の打合せなど、高級ホテルの1室や料亭などで打合せをしても認められる場合もあるかもしれません。

 そういった場合は5,000円を超えても会議費として認められる余地があります。

 ですが比較的まれなケースで、不必要に豪華であったり多量のアルコールが入っている場合は改正後も認められません。

証拠資料

 1人当たり5,000円以下の飲食費を交際費等から除外するにあたって、要件が決められてます。基本的に領収書の裏に参加者全員の所属・名前・関係と人数を記しておけばほぼ問題ありません。

 具体的には以下の事項を記した書類を保存しておくことが要件となっています。

イ その飲食等のあった年月日

ロ その飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係

ハ その飲食等に参加した者の数

ニ その費用の金額並びにその飲食店、料理店等の名称及びその所在地

ホ その他参考となるべき事項

 これらの一覧表を作るのが理想的ですが、必ずしもそこまでする必要もありません。イとニは通常領収書に書いてあるはずですので、ロとハを記しておけばほぼ要件を満たすことになります。ホは通常書かなくて良いと思いますが、一部先方が負担したとか、割り勘したとか、特に金額計算にかかわる部分で特別なことがあった場合は、その旨を記載しておく必要があります。


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