欠損金の取り扱い

 現行の法人税法は事業年度単位課税を原則としていますが、資本の維持、担税力等を考慮して次の場合に、事業年度の損益通算による繰越控除等を認めています。

(1)青色申告法人の欠損金額の9年間の繰越※1

(2)白色申告法人の災害損失欠損金の繰越

(3)会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金額の繰越

(注1) 平成13年4月1日前に開始した各事業年度において生じた欠損金額については5年、平成13年4月1日以後に開始した事業年度から平成20年4月1日前に終了した事業年度において生じた欠損金額については7年です。

1.欠損金とは?

 欠損金額とは、各事業年度の所得の金額の計算上、その事業年度の損金の額がその事業年度の益金の額をこえる場合におけるそのこえる部分の金額をいいます。(法2二十)

 つまり単なる損益計算書等の赤字の金額ではなく、税務上の各種調整をした「税務上の赤字」をいいます。

2.青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し(法57)



通常の場合はこの規定の適用を受けることになります。簡単に説明しますと、過去に青色申告を行っている法人に赤字がでた場合には、黒字が出た事業年度の損金(経費)とすることができる規定です。

確定申告書を提出する内国法人の期首から過去7年間に生じた欠損金額は、各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入します。

・上記欠損金額は、その各事業年度前の事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されたもの及び欠損金の繰戻しによる還付金額の計算の基礎となったものを除きます。

・損金算入額は、この規定の適用前の所得の金額(その欠損金額の生じた事業年度前において生じた欠損金額相当額で、この規定又は災害損失金の繰越しの規定による損金算入額を控除した金額)を限度とします。

・欠損金額の生じた事業年度について青色申告書である確定申告書を提出し、かつ、その後において連続して確定申告書を提出している場合に限り適用します。
 したがって欠損事業年度に青色申告書を提出していれば、控除する事業年度は白色申告でもよいことになります。なお、欠損金額の損金算入は最も古い事業年度で生じた欠損金から控除します(基通12-1-1)

3.青色申告書を提出しなかった事業年度の災害損失金の繰越し(法58)


 確定申告書を提出する内国法人の各事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額のうち、棚卸資産、固定資産、又は他の者の有する固定資産を利用するために支出された繰延資産について災害により生じた損失に係るものがあるときは、次の算式により計算した金額を、その各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入します。

・上記2又は欠損金の繰戻しによる還付の規定の適用があるものは除かれます。

・損金算入額は、この規定の適用前の所得の金額(その欠損金額の生じた事業年度前において生じた欠損金額相当額で、この規定又は上記3の規定による損金算入額を控除金額)を限度とします。

・損失の生じた事業年度にその損失の額の計算に関する明細を記載した確定申告書を提出し、かつ、その後において連続して確定申告書を提出している場合に限り適用します。

(次により計算した金額が損金の額に算入されます)

(1)災害事業年度の欠損金

(2)災害損失金-保険金等により補てんされる金額

(3)(1)と(2)のうちいずれか少ない方

(災害損失金の範囲)

・資産の滅失損壊による損失又は価値減少による損失(取り壊し費用,除去費用等の付随費用を含む)

・1年以内に現状回復のために支出する修繕費、土砂等の障害物の除去費用や損壊、価値減少の防止費用を含む)

(災害の範囲)

・震災、風水害、火災、冷害、雪害、干害、落雷、噴火その他自然現象の異変による災害

・鉱害、火薬類の爆発その他人為による異常な災害

・害虫、害獣その他生物による異常な災害

※盗難損失、有価証券の滅失、貸倒損失は災害損失にはならない。

4.会社更生等による債務免除益等があった場合の欠損金の損金算入(法59)



 会社が倒産したときに例えば銀行からの借入金について多額の債務免除を受けることがあります。

 このとき単年度で見ると多額の債務免除益が発生し、利益が出る場合がありますが、キャッシュが増えているわけではないので、この利益に法人税がかかった場合支払うことは難しくなります。

 継続して青色申告をしている場合は、当然7年間の青色欠損を控除するのですが、7年以上前に大きな赤字を出したため、多額の欠損金が切り捨てられ手いた場合はやはり法人税等がかかってしまいます。

 こういったことにならないよう、倒産などで大きな債務免除益や資産の評価益等が出た場合には、7年以上前の切り捨てられた欠損金額もこれらの利益に対応する金額の範囲で損金に算入されることとなります。

(1) 会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定による更生手続開始の決定があった場合において、その該当することとなった日の属する事業年度前の各事業年度において生じた欠損金額で政令で定めるものに相当する金額のうち、債務免除を受けた金額や役員等から受けた贈与の金額、資産の評価替えに伴う評価益の額の合計額に達するまでの金額は、当該適用年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入します。

(2) 民事再生法の規程による再生手続開始の決定等(注1)があった場合、再生債権等(注2)について受けた債務免除の金額、や役員等から受けた贈与の金額、資産の評価替えに伴う評価益の額の合計額に達するまでの金額を適用年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入できます。

  (注1)再生手続開始の決定に準ずる事実

  ①民事再生法の規程による再生手続開始の決定

  ②会社法の規程による特別清算開始の命令

  ③破産法の規程による破産手続き開始の決定

  ④その他準ずる事実

  (注2)対象となる債権

  ①民事再生法に規程する再生債権等

  ②特別清算開始前の原因に基づいて生じた債権

  ③破産法に規程する破産債権等
  ④その事実の発生前の原因に基づいて生じた債権

 ・損金算入額

 次の①から③のうち最も少ない金額

 ①債務免除等による利益の合計額

 ②欠損金額

 ③当期の所得金額





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